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「チェレステはな、広いんだ」
先走っていった薫に追い付いた
と、いうより
薫が2人が外に出てくるのを待っていて合流した時に
薫が言った。
「どのくらい広いんだ?」
「そうだな…国一つが余裕で入るくらいか?」
少々考えるポーズをとって薫はアバウトな説明をする。
【国】がどれを差すのか分からないから余計にアバウトな説明だ。
「国一つって…広いんだな」
厳は一瞬目線が下を向く。
【国】が何を指しているか分からないから取り敢えず厳は自分の祖国日本を想像した。
確かに島国とは言えど
あれが余裕で入るなら広いな、と厳は思案する。
「街中ぜぇーんぶ隅から隅まで回ろうと思ったら軽く10ヶ月はかかるよ。」
両手で大きな円を書くようなポーズをとって、和が説明する。
「10ヶ月…」
再び目線が下を向く厳の心情は、推し量るのが容易だった。
「馬鹿ニコ!」
「痛っ!!」
厳の気持ちを察した薫が和の頭をポカンと叩く。
音のわりに相当痛かったらしく
薫に叩かれた頭を目に涙を溜めながら押さえている。
「いきなり酷いなもぅ。
何するのよ!」
和は頭を押さえながら
薫を睨み付ける。
「お前も子供じゃねぇんだから、少しは厳の気持ちを察しやがれ。」
厳の方を向いて話す薫に
厳君の気持ち…?
と呟きながら
和も厳の方を向く。
厳は依然として下を向いていた。
「さっき言ってたろうが。
“仲間を捜している”
って。」
「あ、」
和は先程の部屋での会話を思い出した。
「捜そうって言ったのお前だろ?」
「うん」
「そのお前が、酷な事実を教えてどうするよ。」
すると和はちょっと申し訳なさそうにした…
かと思いきや、
思い直して言い返す。
「最初にこの街が広いっていったのかおるちゃんじゃん!!私悪くないもん!
痛っ!」
またしても薫が和を叩く。
「つべこべ言うな。」
「うぅ…酷いよ、酷いよかおるちゃん。」
「俺は“つとむ”だ。」
最後に名前の訂正をして
薫は厳に話かける。
「厳、この街は確かに広い。」
「…隅から隅まで回ろうと思ったら軽く10ヶ月はかかるんだろ?」
厳は下を向いたまま
そう言う。
「確かに。…でもそれは、階級がパリーアの奴だけなんだ。
俺はアルトロ
和と厳はコムーネ
だから行ける範囲で全て
回るとしてもだ、そんな…10ヶ月もかからない。
そう、気を落すな。」
薫がフォローになっているのか分からないが、厳を元気付ける。
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