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小森 智(こもり とも)が父親に自分の嫁が来る、と言われたのは、つい昨日のことだ。
いや、正確には知り合いの娘だと言っていたがあまりの不自然さに問い詰めたら、酒の席で
「息子の嫁にほしい」
と言ってしまったらしい。
今日は顔見せ程度だからと高校2年の夏休み初日。
小森神社と呼ばれる、この稲荷神社の境内で仏頂面しながら待っているわけだ。
「あー……。気持ちいい」
社の前に鎮座する二体の稲荷の片方に触れ、智は少しでも暑さをしのごうとしていた。
照りつける太陽もここでは生い茂る木々によって木漏れ日程度になっている。
石でできた稲荷は、ひんやりとしていた。
智の家は代々神社の神主をしていて、自宅はこの稲荷神社の裏にある。
本当は家で待っていてもよかったのだが、逃げ道は多いに越したことはない。
相手が来次第、逃げるつもりだ。
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