廃城の記憶姫

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「どこだ、ここ…………」 ふと目を覚ました僕は、思わずそう呟いた。僕が居るのは見覚えの無い部屋のベッドの上。まるで夢からまだ覚めていないような気分だ。 何故ならこの部屋は豪華すぎる。 ベージュの絨毯が全面に敷かれ、壁際にはどっしりと腰を下ろす金色のクローゼット。壁の一面が丸々窓になっていて、真っ白いレースのカーテンから射し込む朝日は、天井に吊られたシャンデリアをキラキラと引き立てていた。 部屋の真ん中にはガラステーブルとソファー。色とりどりの宝石に装飾された全身鏡が隅に置いてあったり、とにかく豪勢すぎる部屋だ。 僕はふいにずきりと傷んだ頭に顔をしかめつつも、現存する記憶を引っ張り出す。しばらくぼーっとして天井を見つめていると、一番新しい記憶がやっと蘇ってきた。 そうだ。 僕は廃城に迷い込んだのだ。 その時、部屋の扉のノブが回る音がした。反射的にそちらへ目をやると、そこには一人の女性が微笑んでいた。 腰まである綺麗な髪。天使のリングがその髪質の良さを物語っている。そして纏うドレスはまるでどこかの国の姫のよう。 美しすぎるその出で立ちで、彼女は確かに僕へ微笑み掛けていた。身動きをとることも声を出すことも出来ない。呆然とする僕に対し、彼女はふわりと笑って口を開いた。 「おはよう、透。目覚めはいかが?」
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