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まだ、頭がぼーっとする。
別に低血圧なわけではないのに……と、僕は目をこすってから改めて料理を見つめる。
正直言って、見たこともないような料理だ。唯一分かるのは…………サラダ。
これがお城暮らしかあ。
「全部私が作ったのよ? 一緒に食べましょ」
そう言って無邪気に笑う彼女に、僕は自分の顔が真っ赤になったのを感じた。彼女は美しすぎる。ついでに僕にはそういう免疫がないのだ。
照れを隠すのも兼ね、僕は料理をかき込んだ。それはびっくりするほど美味しくて、寝起きだというのにみるみる平らげていく僕。彼女はそんな僕を満足げに見つめていた。
「すごい。まさか全部食べてくれるとは思わなかったわ」
「美味しすぎて、つい」
「嬉しい!」
頬を赤らめ笑う彼女。僕の心臓が跳び跳ねる。
「あの、さ。君に聞きたいことが沢山あるんだけど」
食事を終えて一息つき、僕は結構な勇気を出してそう問いた。聞きたいことがあると伝えるだけなのに、何故こんなに後ろめたいのだろう。
「いいわ。ただし、私と踊ってくれたらね」
そう微笑み、再び僕の手を引く彼女。誘われるがまま席を立つと、どこからともなくクラシックが流れ出す。ダンスなど踊ったこと無いはずなのに、極自然に彼女と踊り出す僕。彼女のリードが上手いのだろう。
「聞きたいことって何かしら?」
「あ、えっと……。僕は何故あの部屋で寝ていたの?」
「貴方がここへ迷い込んできたからよ。一晩泊めて欲しいって、貴方はフラフラな体で私に言ったの」
「本当に?」
「本当よ。失礼ね」
「ご、ごめ……」
「ウソ」
ふわふわ笑う彼女。クラシックはBGM。歌うような彼女の声はとても心地よく、全てがどうでも良くなっていく気がした。
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