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獣人は運動神経が良い。
獣だったときより数倍力が強くなっているからだ。
灰「よっと…」
灰は手頃な枝まで飛び乗り、周りを見渡した。
灰「…この木に間違いねぇよな?」
匂いはするが、人影が見つからない。キョロキョロとしていると…
チャキッ
灰「!」
後頭部に何か固い物が当たった。
?「動くな!」
振り向こうとした灰に怒鳴る声。
だいぶ息があがっているようだ。
灰「落ち着け、俺達はてめぇを助けに来た。人間」
?「助けてなど…もらわなくて良い!」
人間がそう叫んだ隙に、灰は振り向き、相手の腕をねじりあげる。
?「っ!」
灰「書類通りだな。武器を持ち歩く人間。じゃあ、お前の名前は雪であってるな?」
雪「………」
書類通りでいくと彼女の名前は雪だ。これからはそう呼ばせてもらおう。
雪は金髪までいかない黄色の髪。ピンクの瞳。ローブとネックオーマーを合わせたような物で口まで隠し、そのしたは、普段着のようだ。
雪「放せ!俺はっ」
灰「あ?おれ?」
女性からあまり聞かない一人称だった。
だが、灰の知り合いにも居たのであまり驚かない。
雪「ここの化け猫を殺しに来た!そいつを殺すまで人間界には戻らない!!」
ピクリと反応する灰。一瞬眉間に皺が寄った。
灰「物騒な話だな」
雪「黙れ!貴様にわかるか!私の気持ちなど!!」
灰「獣人ってのも万能じゃないからなっ」
雪「うわ!!」
軽く4mはあるところから雪を担いで飛び降りる。
雪「降ろせ!俺は戻る気は無い!!」
灰「わかってる。大人しくついてくれば良い」
雪「?」
雪は疑問に思ったが、とりあえず下ろされた。
灰「逃げてもまた誰かが捕まえに来る。大人しくしてれば、俺達は上に報告してお前をどうするか決める」
雪「人間界に戻されるだけだ…」
雪は悲し気に俯いた。
今日何度目かの溜め息を吐き出すと、灰は雪の頭をポンポンと軽く叩いた。
灰「別に人間がこの世界にきてはいけないなんて法律はねぇんだ。許可さえ取れば誰でも来て良い」
雪「え?」
意外な事実に雪は目を見開く。灰は少し微笑むと、歩き出す。慌て後ろからついていく。
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