先ずは

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「へー心咲は、お礼も言えないんだぁ」 翔、は嫌味っぽく言う 「お前が勝手にした事だろ! さっさと離れろよ」 あまりの近さに、息苦しさを感じ 翔の胸を両手で突き飛ばす しかし、ビクともしない彼に 心咲の両手は、一纏めに捕まれてしまった。 「お礼を言うまで、このままだぞ」 その言葉は、脅迫紛いに聞こえた。 「クソッ 有難うございました!!」 心咲は、顔を歪めつつ 投げ遣りながらも言ってやる。 もうこれで十分だろ! 早く解放して欲しい 「お礼は、顔を見て言わなきゃね 失礼だろ?」 心咲に顔を合わせるかの様に 翔は、腰を低くし 意地悪く笑う そして、心咲の顔を覗き込むような目線 「嫌だ見るな!」 心咲は、思わず 顔を背けて目を瞑った。 こんな事で赤面してしまうなんて… 赤面した顔を見られる事が恥ずかしくて 堪らない 「っ… 参ったなぁ」 翔は、小さく呟くと 心咲から手を離し、自らも距離をとった。 「ねぇ、この本借りたいんだけど 受付してくれない?」 スッと 心咲の頭の横にあった本を抜き取った翔に 心咲は、俯いたまま 無言でカウンターに向かった。
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