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「おっ、おい!」 「失礼しましたー」 いきなり手を捕まれ、驚く翔を尻目に 何事も無かったかのように頭を下げ、教務を後にする心咲 まだ繋がれている手は、熱を帯びる。 「何の真似だ!」 人気のない角で立ち止まり、振り返ると 心咲は、翔を睨んだ。 「それはこっちのセリフだ!」 翔も思わず怒鳴るが、少し上ずってしまったかもしれない 心咲に手を繋がれたままで、気が動転していた。 「何なんだよお前は、まさかあれも業とか? 先生の前で困る俺の顔がそんなに面白いのか!」 心咲も怒鳴 そうだ きっと佐々木は、靴を隠し 業と先生に見つかるよう騒ぎ立て 教務室で言葉に困り果てている俺を、嘲笑っていたんだ。 そうとしか考えられなかった。 何処までも悪知恵の働く奴だと 呆れを通り越し、尊敬ものだとさえ思えた。 「何の話だよ!?」 白々しい、しらばっくれる気か! 「俺の外履きは何処だ?」 「はっ?」 思わず翔の胸ぐらを掴む心咲 「もういい、裸足で帰れば良いんだろ!? どうだ?滑稽な俺はそんなに笑えるか?」 フッと 思わず自嘲的な笑いを浮かべ、翔の胸ぐらからスルリと手を離す。
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