そして

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咄嗟の事で、避けられなかった。 顎を捕まれ、引っ張られる。 机に手を突き 心咲は、必然的に体ごと前のめりになってしまう。 「っ痛い」 キッと、翔を睨んだ。 顔が近い 「解ってないね心咲は…」 その目は、俺を煽るだけだよ? 「例え嘘でも、俺の話なら朱里は信じるんじゃない?」 クスっと笑い 翔は、そう続けた。 「っ…」 何も言い返せない 心咲は、自分と翔が各々違う言い分を朱里に主張したなら 自分は、信じて貰える自信が無かった。 「これ以上、朱里に嫌われちゃても良いのかなぁ?」 翔の声が頭に響く 既になけなしの信頼だ。 もしかしたら、底を着いてるかもしれない それでもまだ まだ、少しでも朱里が俺を信頼してくれる気持ちが残っているなら 「嫌だ…もう…」 これ以上は 朱里に嫌われたくない 思わず涙を流してしまう心咲 「心咲ちゃん、俺と賭けるね?」 心咲の涙を、空いている手で拭いつつ 落としの一言を告げる翔 心咲は、小さく頷いた。 「いい子だ」 翔は、心咲の頭を撫で ユックリと手を離す。
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