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現場は既に修羅場と化していた。
催涙弾と酢のにおい。
学生服にヘルメット、それに黒いバンダナで顔を隠した高校生の集団。酢のにおいは、あのバンダナからだ。催涙ガスを中和する作用がある。
それを取り囲む青のプロテクターで身を包んだ警官隊。手には盾と警棒。それに催涙弾を装填した三八ミリ・アンチライオットガン。
状況は、どう見ても学生達が有利だ。校舎からは教員を批判する横断幕がこれ見よがしに掲げられている。
警察車両はどれも酷い有様だった。
放水車はどれも火炎瓶によって炎上しバスやパトカーもペンキを浴びていた。
どうも学生側の中にも知恵が回る者が居るようだ。普通ならば地の利があろうと警官隊がすぐに制圧してしまう。
それがこの惨状だ。普通の暴動ではない。俺が来るまで三人の警官が死んでる。
三人分の流血の跡。
大量の血は嫌な事を思い出させる。小学生の時に遭遇した銀行強盗。返り血を浴びた犯人。あの時は何も出来なかった。
腰の拳銃と警棒の重さを確かめる。そして機動憲兵隊のワッペン。
同じ小隊のスヌークは早くも警棒を抜いていた。気の早い奴だと笑う気にはなれなかった。なぜなら。
「まずは我が小隊が先行する。様子見だ」
先行はいつもは第一小隊の役目だがまあ良い。俺はフェンスを乗り越え校庭内に着地した。スヌークや部下達も慌ててそれに続く。
連中はフェンスを越えた警官を攻撃して来るそうだ。
飛んで来た石やレンガを盾で受け止めた。
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