序    章

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崩月山の山々を切り裂かんばかりの 金属音の様な 山鳴りが鳴り響く。 常盤國の朝焼けに染まる 空を 一匹の碧色に輝く 龍が狂ったように 飛び交っていた。 崩月山の麓の大きな屋敷の庭で、一人の妖狐が 走り回っていた。 久 「碧 ! 碧~ 止めろっ・・今 月讀と祢々斬に知らせるからっっ    頼むから、飛ばんでくれっっっ」 久遠は、はたと思い立ち、屋敷の中に駆け込み、座敷から何か大事そうに抱 えて庭に飛び出して来た。 久 「碧 ! お主が居らぬと、藍が泣くであろう、わしではあやせぬ ! 」 久遠が大事そうに抱えていたのは、まだ生まれて間もない 赤子だった。 赤子が久遠の叫び声に驚いたのか、か細い声で泣き出し、空を舞っていた龍 が舞い降りて来た。
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