序    章

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祢々斬と碧が結ばれ、2年ほど過ぎた頃、二人の間に双子が生まれていた。 碧は普段は、紅玉の丘の中腹の木陰のある辺りに立てられた、小屋で生活 しているのだが、ここのところ 出産のため月讀の屋敷に戻ってきていた。 碧は半妖として覚醒してからも、やはり体は弱く、出産は大事であった。 だが、生まれた子供は、類まれな二人の子だったためか、双子という難産 ではあったが、何とか無事に産まれて来た。 赤子は、二人とも女の子で、今碧が抱いている子は、碧によく似て亜麻色の 髪をしていて、もう一人は茜色に紅の瞳、祢々斬に良く似ていた。 だが、碧の血のせいか、二人の子供には、祢々斬のように「鬼」を代表する 顔などに表れる独特な文様はなかった。 生まれた時、祢々斬はそれを喜んだが、碧は少し寂しげだった。 子供が生まれてから2ヶ月ほど経っていたが、産後の日経ちが思わしくない 碧が、月讀の屋敷から紅玉の丘に戻れずにいたある日の朝の出来事だった。 今日は月讀と祢々斬が隣町の物の怪退治に、早朝から出かけていて、屋敷に は、碧と赤ん坊と久遠しかいなかった。 祢々斬は、鬼の業から開放されてからは、時々月讀の仕事を手伝っていた。
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