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神楽荘。
昭和に建てられた二階建て、部屋は計10つの小さなアパートだが、古さを感じさせないシンプルな構造だ。
何故「神楽」というかは、現在の大家の父親が当時神楽をやっていたからだという噂らしいが、実際は誰もよく分からない。
その神楽荘の二階の一番左側が蝶華の部屋だ。
午後9時30分、8時にスーパーを出て30分で帰れるので、いつもより遅い帰宅だ。
蝶華は鍵を開け急いで蛇と狐を入れた。
どうやらこの蛇と狐は見かけによらず力強いらしく、蛇は少年、狐は青年の服を持ってここまで飛んで来たのだ。
本来なら男2人抱えて、しかも荷物も持った状態でなら1時間はかかっただろう。お陰で、蝶華は思ったよりも早く帰宅出来たのだった。
「とりあえず、靴を玄関に置いて2人を居間に寝かせてください」
蝶華の指示に従い、蛇と狐は2人を居間に寝かせ靴を玄関に置く。
自室に鞄を置いてきた蝶華は台所に買い物袋と貰い物を入れた袋を置き、冷蔵庫を開けた。
「とりあえず簡単なチャーハンにするか…」
蝶華は冷蔵庫から卵、ベーコン、グリンピースを出した。
「何を作っているの?」
材料を全てフライパンの中に入れたとき、蛇が訪ねてきた。
改めて見ると、薄緑色の体で舌をチョロと出し、まるでエメラルドのような綺麗な緑色の瞳で蝶華の作っている物を見ていた。
「簡単なチャーハンです。何も食べてなかったなら沢山作った方がいいし…」
「何から何までありがとう。私はスイよ」
「スイ……『翡翠』の翠?」
「そうなの。エンヴィーが名付けてくれたの」
スイはうっとりした顔で言う。
「エンヴィー…って貴方が肩に乗っていた方の人?」
「そうよ。…でも、もうすぐ『エンヴィー』じゃなくなるわ」
そう言ったスイは寂しげな顔をして居間に行った。
先ほどのスイの事が気になりながら、蝶華は2人分のチャーハンと、小皿に入れたチャーハン2人分を居間に持って行く。
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