傷痕と『色欲』

3/33
57人が本棚に入れています
本棚に追加
/243ページ
~~~~~~~~~~~~~~~ ある〔煉獄〕の悪魔がいた。 悪魔は〔煉獄〕の中で唯一の女性だった。女性故に他の〔煉獄〕と比べると力は弱かったが、他の上級悪魔よりも俄然強かった。 しかし、他の〔煉獄〕より力がない悪魔を倒して、自分が〔煉獄〕の一員になれると思い込む者も多かった。 悪魔は恋をした。たくさんの恋をした。 悪魔は魅力的で、相手の方から近付いていた。 この者は自分を理解してくれる…、“〔煉獄〕の自分”ではなく“ただの自分”を愛してくれる…そう思うと悪魔はとても幸せだった。 しかし、最後はいつも悪魔は恋した相手を消していた。 “恋人として近付き、隙をついて悪魔を消して、〔煉獄〕の一員になる” 相手は全員そう考えて悪魔に近付いていた。 悲しむ悪魔に声をかけたのは、2体の〔煉獄〕の悪魔… 2体が会わせたのは、美しい彼女。 「貴方を心から恋し、愛する者は必ずいるわ…」 彼女は悪魔にその言葉と“名”を与えた。 2体は彼女といると幸せそうだった。 悪魔は優しい彼女といるのがとても幸せだった。 しかし、幸せは突然終わった… 彼女は突然いなくなった。 2体は裏切り者と呼ばれた。 そして悪魔は、“名”を棄てた。 「何で!?」「どうしてだ!?」 彼女の与えた言葉を心の隅に押し込み、悪魔は、叫ぶ2体と“名”を見捨てた。 そして悪魔は思う。大切なものを見捨てる苦しみを押し殺して。 本当の裏切り者は私よ…
/243ページ

最初のコメントを投稿しよう!