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ある〔煉獄〕の悪魔がいた。
悪魔は〔煉獄〕の中で唯一の女性だった。女性故に他の〔煉獄〕と比べると力は弱かったが、他の上級悪魔よりも俄然強かった。
しかし、他の〔煉獄〕より力がない悪魔を倒して、自分が〔煉獄〕の一員になれると思い込む者も多かった。
悪魔は恋をした。たくさんの恋をした。
悪魔は魅力的で、相手の方から近付いていた。
この者は自分を理解してくれる…、“〔煉獄〕の自分”ではなく“ただの自分”を愛してくれる…そう思うと悪魔はとても幸せだった。
しかし、最後はいつも悪魔は恋した相手を消していた。
“恋人として近付き、隙をついて悪魔を消して、〔煉獄〕の一員になる”
相手は全員そう考えて悪魔に近付いていた。
悲しむ悪魔に声をかけたのは、2体の〔煉獄〕の悪魔…
2体が会わせたのは、美しい彼女。
「貴方を心から恋し、愛する者は必ずいるわ…」
彼女は悪魔にその言葉と“名”を与えた。
2体は彼女といると幸せそうだった。
悪魔は優しい彼女といるのがとても幸せだった。
しかし、幸せは突然終わった…
彼女は突然いなくなった。
2体は裏切り者と呼ばれた。
そして悪魔は、“名”を棄てた。
「何で!?」「どうしてだ!?」
彼女の与えた言葉を心の隅に押し込み、悪魔は、叫ぶ2体と“名”を見捨てた。
そして悪魔は思う。大切なものを見捨てる苦しみを押し殺して。
本当の裏切り者は私よ…
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