57人が本棚に入れています
本棚に追加
/243ページ
~~~~
暗く、とても広い部屋。
外には赤い満月が姿を現し、窓から差すその月光だけが唯一の明かりだ。
その奥で、月光に照らされた2つの人影。
1つは豪華絢爛な装飾の施された玉座に腰掛けている、権力者の威厳を感じさせる男。
もう1つは、その男の側近であろう者。赤の光以外は真っ暗な部屋で、彼等の密談が行われていた。
男は赤ワインの注がれたグラスを見つめながら、側近に問いかける。
「下級悪魔達の動きはどうだ?」
「はい、今だ溢れ出ている魔力により下界に降りる下級悪魔の数は増え、下級悪魔達の下界での動きは更に過激になりつつあります…」
「そうか」
男は報告を聞き、面倒と言わんばかりに溜め息をつく。
沈黙が少し続き、男が口を開いた。
「考えたのだが、下界にいる下級悪魔達を一掃…上級悪魔の餌にするのはどうだ?」
「何を言うのです…!?正気ですか!」
側近は男の言葉に反論する。
「貴方は下界で、同族に共食いをさせるつもりか…!?」
「魔力を溜めた下級悪魔は力が強くなり更に人間に憑きやすいが、肥えた者程上級悪魔の格好の餌となる。
それに、悪魔同士の喰い合いなど珍しくない。ここは弱肉強食の世界…貴様も何度も見ただろう?」
男は手に持つグラスを回し、血のようなワインを一気に飲み干す。
「安心しろ、一掃は〔煉獄〕に任せる。奴等なら人間に害はなさない。
下級悪魔達を排除させると同時に、餌を与え、力を持たせれば、余の創る世界の最強の剣となるだろう…」
最初のコメントを投稿しよう!