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何を言っても無駄…そう判断した側近は反論を止めた。
「……貴方がそうお考えなら、私はそれに従うだけです…
しかし、〔煉獄〕はアレが…」
側近の様子を見て、男は言葉の続きを理解した。
「ああ…心配するな、“アレ”は12年後に放つ…
他の〔煉獄〕達が力を持った状態なら叩きのめし易いしな…」
男は、まるで愚か者を見下すような笑いをしながら側近に言った。
そして、空になったグラスを床に投げ捨て、赤い月光が差す窓から外を眺める。
城下に広がるのは、おぞましい姿の人成らざる怪物…悪魔達が互いを襲い喰い合いをする姿だった。
手足をもがれながらも闘いを続け、原型も留めていない肉の塊を小さな悪魔達がハイエナのように群がり争いを始めていた。
その地獄絵図のような光景を、漆黒の空で輝く赤い満月がまるで笑っているような光景だ。
「〔煉獄〕を連れてこい。今から共鳴する人間を見つける準備もだ」
「御意、魔王」
側近は頭を下げ、闇に消えた。
1人残った男、魔王はククッ…と笑い、悪魔達を照らす赤い満月に視線を移す。
まるでお山の大将を気取る小物を馬鹿にするように、遥か上空の月さえ見下すように眺める。
「…さぁ、どんな罪深い人間が、“シン”になるのだろうな…!」
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