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苦心惨憺で作った昼食も無事に済み、午後の授業が始まる。
午後の授業は、源さんの担当だ。
源さんは、子供たちに木を伐採する現場を見せようと、前日からはりきっていた・・・
前の日から枝を切るナタを全員分研いでいたそうだ。
木材は普段、何気なしに使っているけれど、実際に、その材料となる木を伐る事は、そう、あるものではない。
一年生の間でも、楽しみにしてきた生徒も多いようだった。当然、教師でも初めて見る人達ばかりだった。
どんな風に木を切り倒すのだろう・・
合宿所の裏山をしばらく登り、少し開けた斜面に立った一本の木の前に、一年生達が集まっている。
数人の森林組合の人も危険の無いように立ち会っている。
自前のチェーンソーを持ち出して、これから切る木を前にしている源さん・・
木の幹に背を向けて、倒す場所を直視する。
木と木の間を狙う。
もし、倒す時に、他の木の幹に傷をつければ、その木は上手く育たなくなってしまう。
今度は、木の方を向いて、足を肩幅に開き、幹の先端を見上げる。
そのまま、下の方へ目線をやり、屈んで、又の間から顔を覗かせ、先ほどの倒す方向を見る。
そういった作業を、何度も繰り返して、倒す方向を確認しながら、幹に切れ目を入れる場所を見定めている。
一同は、固唾を呑みながら、その作業を見守っていた。
「よし!」
切る場所を決めた源さん。
見学の生徒、数十名を前にして、これから、その木を倒そうと身構える・・
チェーンソーの紐に手を掛け、エンジンを掛けようという姿勢で、動きが止まった。
何が起こったのだろう・・・
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