ー 第二十章 ー

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 その『男』に関しても、沖田には『心当たり』があった。 思いたくはないけれど、『そんな男』は、一人しか思い当たらないのだ。    ー彼女の双子の弟『風間 千景』しかー 咲夜の『心の中』に、今尚、居座り続ける、忌まわしい男。 咲夜にとっては『魂の半身』とも言える『血族』だ。  憎んでも憎みきれない、たった一人の『愛しい弟』なのだから……………。 沖田の心が、一気に沈みこむ。咲夜は沖田を『愛している』とは言ってくれたけれど………。 それでも、『不安』は拭いきれないのだ。彼女がどれだけ『斎藤に依存』し、『風間に拘っている』か、知っていたから……………。  そんな沖田の暗い表情に気付いたのか、咲夜が小声で、沖田の耳許に囁いた。 しかし。囁いた途端、耳まで真っ赤になり、ぷいっと顔を背けてしまった。      ー今は、『総司だけ』だからー 短い、そのたった一言だけで、『不安』が溶けてゆくようで………。 己が『単純さ』と、彼女の『照れ隠し』に、思わず『苦笑』が洩れた。 らしくない彼女の珍しい『意思表示』が、こんなにも、自分を『満たされた気持ち』に、させてくれる。
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