We are alone

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We are alone       ●第1話 食べられる土  満天の星空に閃く流星群。大気圏で燃え尽きる星屑は、大地に 達することはなかった。しかし、一際明るい光の点が閃いた後、 砂粒大の星屑が大地に降った。ちょうど長野県の辺りである。  バスは東小諸駅を越えて、山道に入る。千曲川を渡り、さらに 山道を進んだ。不景気を反映して、座席がまばらなバスツアー。  草野たちツアー客は、何の看板もない山道の途中で降ろされた。 特に盛り上がらないバスガイドと添乗員のトークは、バスを降り てからも続いていた。 「天狗の麦飯と呼ばれる、ここの土は珪藻土というもので、厳密 に言うと土ではなく珪藻を食べる形になります。昔、この辺りに は鼻の高ーい、天狗さんがいたんでしょうかね」添乗員の女性は、 話を聞いていなかった草野の方を見て説明していた。 「それでは、さっそく、"食べられる土ツアー"のメインイベント、 ご試食となります。みなさん一列に並んでください」  草野は、添乗員が手渡した発泡スチロールの容器を手にした。 スプーンですくって、その土を口に入れてみる。じゃりじゃりし た歯ざわり、お世辞にもうまいとは言えなかった。 「おかわりは、自由ですよ。と言っても誰もいないようなので、 ラッキーチャンスおかわりをご用意いたしました。じゃじやーん」 添乗員は、発泡スチロールの容器が1ダースほど入っているプラス チックケースをいつの間にか持ってきていた。 「この中に、今回のツアーがタダになるチョコ玉が一つだけ入っ ています。我こそはと思う方は、レッツ・チャレンジ・タイム!」 ツアー客達は互いに人の顔を見るばかりであった。しらけたツ アー代金がタダになるなら、チャレンジしても良いかな、と思っ ていた草野だが、誰も名乗りを上げないので黙っていた。 「はい、あたしやってみるわ」メガネをかけた20代半ば女性が手 を上げた。すぐにつられて、もう一人の初老の男性が手を上げた。 「もういないですか、締め切り…」添乗員がいいかけた時、草野 も手を上げた。    手を上げた3人は、これまたいつの間にか用意されていた机と いすに座らされ、他のツアー客の前で、土を食べることになった。 初老の男性が1回、草野と女性が3回チャレンジしたが、チョコ玉 を引き当てることはできなかった。 「残念!まだチャレンジしますか」添乗員の声に、げんなりした
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