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―――――太陽系第三惑星地球 日本 某所。
朝、少女はいつも以上に慌しく家を飛び出してきた。
「やばいっ!遅刻っ、遅刻っ!!」
「奏(かなで)!朝ご飯は?」
「食べてる暇ないっ!ごめーん!!」
奏と呼ばれた少女は、スカートのすそを翻しながら全速力でバス停へと向かう。彼女の通う高校へはバスで通学しているのだ。
本当は徒歩でも通える距離に無難な高校もあったが…彼女にはいちいちバス通学してまでも通う価値のある高校だったのだ。
―――…一年前までは、特に。
しばらくして少女の視界にバス停が見えてきた。そこには通勤の大人たちや同じ学校に通う数人の生徒たち。
生徒たちの中には、少女の見知った顔…親友の萌黄(もえぎ)の姿も見えた。肩ほどまでの黒髪を風に揺らし、清楚なたたずまいで読書をしながらバスを待っていた萌黄は、走ってきた少女に気付いて笑顔で手を振った。
「あ、かなちゃーん」
「あ、もえ!おはよー!バス、まだ来てなかったんだ!良かったぁー…!」
「ふふっ、良かったね。乗り遅れたら、遅刻確定だもんね?」
「ねー。バスの本数、増やしてくれればいいのにっ」
何とか予定時刻前に到着した彼女の元に、いつもどおりバスは訪れる。座席は空いていないが、それすらいつものことである。
奏と萌黄は昨夜のテレビの話、出されていた宿題の話、今日の授業のことを話しながら地元から少し離れている学校へと向かった。
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