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「―――ね、かなちゃん。今日の部活、一緒に行こうよ。」
萌黄は放課後になった途端、椅子に座ったままであった奏にそう言う。これもまた、いつもどおりである。
彼女たちは一緒の部活に所属している。そして、そこで今のように仲良くなったのだ。地元は一緒であったが、タイプの異なる彼女たちには交流はなかったから。
「んー…いや、いいよ。私、今日は繁華街の方、行きたいし」
「繁華街の方?一人で行くの?私も行くよ!」
「え?いいよ、もえは部活出なよ。私みたいに幽霊部員じゃないんだし!
…彼氏も、いるし??」
「! もう、かなちゃん!…いいのっ、先輩は理解ある人だもんっ!大丈夫っ」
「本当に~?」
奏はにやにやと萌黄をからかう。からかわれている萌黄は頬を赤らめながらも主張する。
「とっ、とにかくっ!繁華街の方でしょ!?は、早く行かないと暗くなっちゃうよっ!」
「あ、そうだね。
…付き合わせてごめんね、もえ」
「いいよ!私、買いに行きたいものもあったから、ついで!」
軽く話す萌黄の言葉が奏には心地よく聞こえ、笑顔で頷くことができた。
そして、暗くなりゆく時間、二人の少女は繁華街を歩く。
さすがに人出が多く、見通しもきかない。そこで、奏は周囲をきょろきょろと見回す挙動を繰り返していた。
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