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そして、本日唯一のいつもどおりではないことが起こる。
二人は、繁華街特有のネオンの光さえ薄らぐような路地裏の袋小路を背に追い詰められていた。
目の前には、一目で不良、と分かるような軽い風貌の若い男が三人…。
「こんな時間に可愛い女子高生が二人でいるなんてっ!今日はついてるなぁ!」
「どっちが好み?俺はね、俺はね、こっちのセミロングの娘!ふわふわしてて俺の好みにドストライクー!」
「きゃあっ!」
「ちょっと、離しなさいよ!!」
粗野な手が萌黄を掴む。
だが、奏はその手を思い切り振り払う。背後に萌黄を庇いながら前方の三人を睨む。
「うひょあっ、気がつえー!いいね、俺、君みたいな娘が好きだー!」
「うわ、お前Mかよ?」
「ちげーよ!俺は、こんな気の強い女子を服従させるのが好きなの!何て言うか、ぞくぞくするじゃん!」
「変態だなー、お前。そう言ってこの前の女の子、遊ぶだけ遊んで捨ててなかったっけ?」
「だって、いざ服従しちゃったらつまんないじゃん?ちょっとは抵抗してくんなきゃ!」
ぎゃははは、と三人は馬鹿話を始めた。
奏と萌黄の警戒が緩む瞬間を待っているのか、追い詰めている安心感か、ただの馬鹿なのかは奏と萌黄には判断がつかなかった。
だが、奏は好機と見たのか、鞄を思い切り三人に向かって振るう。
「うわっ、何すんだよ、いきなり!?」
「―――萌黄、行って!警察、呼んできて!!」
「!―――うん!!気をつけて!!」
まさか反撃されるとは思っていなかった不良三人が動揺している間に、奏は萌黄を大通りの方へと逃がす。
奏自身も逃げることが出来ればいいのだが、奏も萌黄も足に自信がない。だったら、どちらかがここで足止めをしなくていけない。
―――せめて、萌黄が大通りに辿り着くまでは。
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