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「……おい、何だ、それ。」
「…あ?何だよ。」
「だから…それだよ!その女の下で何か光ってるんだよ!」
不良の一人が怯えたような声を出す。
その時、顔を押さえていた手が緩み、奏は自分の身に何が起こっているのか、見た。
「なに…これ…」
自分を中心に、自分の下に、円陣のようなものが光っていた。それは、見ている間にも徐々に光を増していく。
「んだ、これ…。おい、お前がやってんのか!?」
「知らないわよ!」
奏にも何が起こっているのか、分からない。
これは何だろう。まるで、萌黄が好きなファンタジー小説に出てくる魔法陣のようではないか。
…魔法、陣?
「おい、もうそんな女置いて逃げようぜ!大通りの方から人の声するし…!!」
「そ、そうだな。逃げ―――ってぇ!!何だ!?噛むんじゃねぇよ、このアマッ」
「に、がさないわよ…!婦女暴行で…地獄に落ちろッ!」
「んだと、てめぇ…!!」
「―――おい、お前は足止めしてろ!俺たちはこの女を引き剥がしてから行く!」
不良の内一人は大通りに向かって走っていく。その向こうに、萌黄を含む数人の警官の姿が見えたのを、奏の視界は捉えた。
―――だが、その視界はすぐに閉じられる。
「―――離せッ!このクソアマッ」
「んぐぅっ!」
腹を、殴られる。だが、奏は離さない。
もう少しだ。もう少しで助けが到着する。これだけやられて逃げられるわけにはいかない。その思考が、奏を支配していた。何度殴られても、血を流しても、しつこく食らいついてやった。
その間にも、魔法陣のようなものは光を強くし……もう眩しいほどに光り輝いた時……
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