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「―――おい、ここに女性がもう一人いたはずだ!お前の仲間が連れ去ったのか!」
「し、知らねぇよ!俺も何がなんだか分かんねぇんだよ!!
―――あいつら、一等眩しく光ったかと思ったら消えちまってたんだよぉッ!!」
「しらばっくれるんじゃない!調べればすぐにバレるような嘘吐きやがって!事情は署で聞かせてもらおうか!」
「本当だよぉ!信じてくれよぉおお!!!」
足止め役となっていた不良がパトカーに連行されていく。
そして、その場で萌黄は奏の鞄を拾って緩慢な動作で周囲を見渡す。それは、ついさっきまで繁華街で奏自身が見せていた挙動と一緒だった。
「あなたにも、詳しい事情をお聞かせ願えますか?」
「あ、はい…」
萌黄と付き添っていた婦警の声で、萌黄はハッと現実に返る。
―――だが、やはりそこには親友の姿はない。あるのは、殴られたと思われる時に落ちた奏の血の痕のみだ。
「…かなちゃん……奏ちゃん……どこに行ったの…?」
応えは、なかった。
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