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「お前のせいで、チビって言ったの怒られちまったじゃねぇか」 「……それは俺のせいじゃないですよ」  さっきよりも随分小さな声で、こそりと先輩が告げてきた。  禁句っぽい単語をもう一度口にするとは、反省していないのか、それとも許容されているのか。巷で人斬り集団などと揶揄されている組織の割には、ここには思いの外に気安い空気が漂っている。配属の折りに挨拶をさせてもらった組長も、穏やかな雰囲気の方と言う印象を受けていた。他組と、特に切り込み部隊の一番組が持つ荒々しいそれとは対照的だった。 「先輩、何で伊高伍長は受けるばかりなんです?」  乱取り稽古を受けて、そして今また他の者との稽古を見学していて、ふと沸いた疑問を口にした。  先輩は問われた内容に、さも当然とばかりにあっさりと返答する。 「伍長の杖術は防御専用なんだと。まぁ、あの守りを抜けるようになりゃ大したもんだな」 「……? 防御が得意なら遊撃隊の二番組より、三番組配属の方がいいんじゃないんですか?」
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