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「あぁ、お前まだ知らないのな。伍長は元々は妖怪狩りの退魔師でな、一番の得物は杖じゃなくて――痛てっ」 「うわっ」  新たに浮かんだ疑問を告げ、意外に律儀に回答してくれる先輩の言葉に耳を傾けていると、不意に二人揃って小さな悲鳴を上げた。何かがぶつかった感覚に、新吉は額をさすりながら飛来物を探して視線を辺りに巡らせるが、それらしい物は見当たらない。 「そこの二人、稽古中の私語はもうちょっと控えめにしようね」  丸聞こえだと笑っていたのは、話題の対象――伊高伍長その人だった。知らぬ間に稽古は一段落していたらしく、伍長だけでなく他の隊士達からも視線が集まっている。  だが新吉は、その視線に対する羞恥より、目撃した現実離れしている光景に目を丸くした。  座の中央に凛と立つ伍長。その彼の掲げた指先には、小さなつむじ風が白く渦を巻いている。  世の中には常識を越えた異能の使い手がいると噂には聞いていたが、まさか目の前の上官もその一人だとは。
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