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先輩から聞いた、伍長は浅葱組に入る前は妖怪退治を生業としていたと言う話。それによれば、おそらく伍長は多くの妖怪と戦ってきたのだろう。死線も幾度となく越えてきたかも知れない。戦いに臨む際の心得、その言葉に重みを感じ、思わず背筋を正した。
「まぁ、意識しすぎてカチカチになっても駄目なんだけど。何だって程々がいいんだよ。戦も、恋もね」
いささか茶化すような話しぶりで伍長が口を開いた。ふっと場の空気が緩み、あちらこちらで忍び笑いがもれる。新吉も肩に入っていた力を抜き、隣の先輩と顔を見合せて笑みを浮かべた。
「さて、じゃあ続きを――」
伍長が手を打ち稽古の続きを再開しようとしたその時、突然に木戸が開いた。
「失礼します」
伝達役の隊士が入ってきて、抑揚なく淡々と用件だけが告げられる。
「伊高伍長、討伐任務の件ですぐに出頭するようにと。――妖族です」
「分かった」
伍長が了承すると、任務の済んだ伝達役は、他の隊士に目もくれる事なく早々と退室していった。
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