学生から部活の誘い

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「はい。演劇部を作るには部員も必要だけど、顧問も必要なので先に先生を決めちゃおうと思って。だから顧問になってください」 「あ、お、お願いします」 天羽が勢いよく頭を下げると、慌てて楠木も頭を下げた。 ((どうしよう)) 小林仁は美術部を作りたいと思っている。 だが、どの生徒に声をかけても美術部を作ることは現在では出来そうにもない。 そう思っていた矢先に演劇部の顧問への誘いを受けた。 恐らく、今誘いを蹴れば今後顧問の誘いはないだろう。 今、小林にとって美術部を取るか、演劇部を取るかの最大の選択を迫られているのだ。 「先生、美術部を作りたいんですよね?」 と、天羽が小林の思考を読んだかのように頭を上げた。 天羽は小林が勧誘をしていたのを見ていたのだ。 「一時的でいいんです。他に顧問になってくれる先生が見つかるまで、です。それに舞台の背景を小林先生が描いたら美術部の宣伝にもなると思いませんか?」 「な、なるほど」 天羽の説得に納得した小林はぽんっと手を叩いた。 「じゃあ……」 小林が答えを言いかけたところでベルが鳴った。 「あ、昇降口が閉まっちゃう。先生、返事は明日でいいので今日は失礼します」 「先生、さようなら」 「え、ああ、さようなら」 再度、ペコリと頭を下げた2人は鞄を持ち昇降口へ走って行った。
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