新米教師・小林仁

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【デイリィ1】 桜舞い散る4月の新学期。 職員室の窓からは楽しげに会話をしながら学校へ登校してくる学生たちの姿が見える。 そんな楽しげな外の登校風景とは打って変わり、職員室では1人の新米教師がため息とともに机に突っ伏していた。 「どうしたんですか? 小林先生」 隣の席に座る年配の女教師がとりあえず形式としてそう尋ねてはきたが、顔は授業のプリント作成の為にパソコンのほうを向いている。 女教師に小林と呼ばれた新米教師は机に突っ伏したまま、顔だけそちらに向けて話始める。 「いや、それがですね? 僕、美術部の顧問とか副顧問とか、新米だからそれは無理でも何かの形で美術に関わりたいと思ってたんですよ」 「そういえば小林先生は美大出身でしたね」 返事は返すものの相変わらず女教師の目線はパソコンに注がれている。 「はい。まあそんなわけで、美術の授業も担当させてもらってるんですけど。雷壬(めいじん)高校って美術部とかイラスト部とか、せめて漫画研究部ってないんですか?」 「……ああ~。そう言えば去年の3年生が最後の美術部だったかもしれないわね」 プリントを完成させて印刷ボタンを押した女教師はコーヒーを飲みながらそう言う。 それを聞いてよほどショックだったのか小林は大きなため息をついて、再び机に額を付けて突っ伏してしまった。 そうしてしばらく沈黙が続き、印刷機から40枚のプリントが出てくると、女教師はそれを持って立ち上がり、小林にとって起点ともなる一言を残して立ち去って行く。 「そこまで美術部に思い入れがあるなら、学生を集めて作ればいいんじゃないですか?」 「…………」 単純なことに気づかされた。 ないならば作ればいい。 「そうだ。ないなら作ればいいんだ。よ~しっ!!」 意気込んで立ち上がると、授業開始を知らせるベルが鳴った。 周りを見渡すと、職員室には教頭と校長以外の教師の姿が全くない。 残っている教頭と校長は授業にも出向かず、突然大きな声を出して立ち上がった新米教師を見て訝しげな表情をしている。 「……授業に行って来よう」
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