学生から部活の誘い

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【デイリィ6】 気絶した小林が目覚めた場所は教室だった。 現在は使用さていていない教室なのか、黒板のある場所の反対側には、山積みの段ボールやハンガーラック、他にも様々な荷物が散乱している。 どうやらこの部屋は物置か何かに使われてるらしいと、横たわる小林が結論に至ると頭上から声をかけられた。 「やっと目覚めた。大丈夫ですか?」 「せ、先生、大丈夫ですか?」 腕を組んで上から目線で物を言う少女と、顔の前で手を組み心配そうに問いかける少女は小林の顔を覗き込んでいる。 その2人の少女の顔に小林は見覚えがあった。 最初に声をかけたほうは廊下でぶつかった少女、そしてもう1人は同じ廊下で昨日パンを咥えていた少女だ。 「君は昨日の……え~っと」 「あ、私の名前は楠木菜那です」 「楠木さんか。そして、そっちは天羽千鶴さん、だよね?」 「廊下でも私の名前を言ってましたね。どうして名前を?」 怪しい物でも見るように目を細めて睨みつける天羽にたじろぎながら小林が答える。 「ええっと、僕の授業に出てるだろう? それに、なんだか睨まれてたみたいだから僕が何か悪いことしたのかなと」 実際はお世辞にも上手いとは言えない絵を見て、授業中に睨まれていたことを思いだし、名前と顔が一致していたわけだが、本人を目の前にして絵の事を言うのが憚られ、それを伏せておくことにした。 「ふ~ん。ちなみに特に先生を睨んでたわけじゃないですよ。先生の絵を見てたんです」 睨んでいたように見えたのは視力が悪いからだと言う。 相変わらず腕を組んだまま、天羽は品定めをするように上から下、下から上へと視線を移動させている。
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