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「俺はお前を――」
「もうやめてよ……! 何も、聞きたくない……!」
リアが要を遮る。
「あなたのこと、信じられるかもって、そう思った。あなたは今までの人たちと違ったから……」
「お前……」
リアは落涙した。力が入らないのか、尻を地面に付けた。
「初めてだった。温かいご飯を食べさせてくれて……、お世話してくれて、服も買ってくれた」
「……」
要は静聴。
リアはわかってくれていた。こんな状況でなければ素直に喜びを感じられたかもしれない。
「でも、結局は、……あなたも一緒だった。大嫌いなあの人たちと!」
「違う! 断じて違う、信じてくれ!」
「どうやって……? どうやって信じろなんて言うの……!?」
それを実証する手段は、ない。言葉だけでしか方法がない。
「ほら……何も言えない」
「……」
要はこの時初めて自分の無力を呪った。
やれ銃の取り回しがうまい、やれ剣戟が凄まじいと評されても、今、この場においてそれらが少女の心を救う事などできはしないのだ。
「もう疲れたの。どうして今まで死ぬってことを忘れていたのかはわからないけど……死ぬ」
リアはヨロヨロと立ち上がり、屋上の端へと歩き出す。その背中は一片の迷いなく死に向かっている。今ここで引き止めないと間違いなくリアは死ぬ。
要を呪ったままに、死んでいく。もう既に死の絶壁にいる。
「ダメだ!」
要が走り出す。なんとしてもリアを死なせるわけにはいかない。
「来ないで!」
その声に要は足を縫われたように動けなくなってしまった。
リアの叫びが、あまりにも悲痛で。そして何も出来ない自分が本当に情けない。歯噛みして、自分を責める。
「……そんな、馬鹿な」
――最強と呼ばれた俺が、人を守るはずの俺が、たった一人の少女も救えないというのか。
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