誰がために

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「女とは化けるものだな……」 普段はあどけなさしか感じられない少女にこんな魅力が内包されていようとは。女に対して非常に鈍感な要にも、リアの容姿が類まれなるものだと理解できる。まあ小学生並みの体型なのが玉に傷か。 観覧車は半分を回った。リアは今も眠っている。堪らなく暇になってきた。 タバコを吸いたいが、リアがいるのでやはり吸えない。ジャケットの裏側に隠してあるタバコは実を言うと、封を切ってはいない。 リアはとことんタバコを嫌がる。副流煙があーだこーだ言っては、小姑のようにやかましい。それならば外でこっそり吸えばいい、と試してみたが結局匂いでバレた。厄介なことに嗅覚も優れている。 要は望む望まないに関わらず禁煙しているのだ。吸いたいが吸えない。徹底的に証拠を隠滅すれば吸える。だが面倒だ。とんだ二重苦に苛まれることになってしまった。 正直手間暇かけてまで有害物質を摂取することに意味はあるのだろうか、と最近は余計なことまで考えるようになった。 それもこれも皆この少女のせいだ。
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