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「!」
要は殺気を感じた。本能で、直感的に凶弾が迫っていることを悟るとすぐさまリアの体を抱き寄せ、伏せる。
その判断が一瞬でも遅れていたら間違いなく要の脳を弾丸が貫通していたことだろう。
代わりに強化ガラスをいとも簡単に貫いた。このタイプのガラスは穴は空くが亀裂が走らないようになっているので、穴は空くが割れはしない。
「ほあ、なに!?」
リアが眠りから覚める。
「いいから、伏せていろ!」
リアの頭を掴み下げる。少しでも生きている素振りを見せれば追撃が来るだろう。
――弾丸はリアを避け俺だけを狙っていた……つまり、目的はリアか!
スナイパーの位置は、弾丸の飛んできた方角から推測するに、西か。
これは逆光を利用した狙撃でもあった。手馴れている。本物の殺し屋か。
「要……何があったの?」
恐る恐るリアが訊ねる。要は気づかぬうちにすごい形相だったらしい。
「リア、いいか、よく聞け。お前は降りたら人ごみに紛れろ。後で迎えに行く」
「え、え?」
要はリアの返答を待たずに無理やり扉を開けて、十メートルはあるだろう高さを一気に躊躇なく飛び降りた。着地の瞬間体を回して衝撃を和らげる。
「要!」
振り向かずに要は走り出した。
敵を、殺しに行く。
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