誰がために

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園外で最も近い西方面のビルディングに向かい、非常階段を利用して屋上まで一気に駆け上がる。要が予想した通りスナイパーライフルを構えた人影。それはライダースーツに仮面を被った怪しげな女だった。 その狙撃手はまるで要が来るのを歓迎しているように、ゆったりとしていた。その所作が自分を軽んじているようで要には不快だった。 「どんな理由であいつを狙ったかは訊かん――死ね」 遠慮なく銃を抜く。走りながら照準を合わせる。右の腕を獲るために、発砲。かわされたので、さらにもう一発。しかしそれも外れる。要が次弾を放つ際に生じる照準合わせが隙となっている。 先ほどの二発は大きなタイムロスとなった。三段目を外した瞬間、敵はもう眼前にまで肉薄していた。右手には何時の間にやらナイフが握られていた。 「ちっ!」 それをリボルバー拳銃のバレル下部に手を添えて受け止める。 拮抗する力と力。 要は力を解き、後ろへ軽くステップする。敵は前のめりにバランスを崩した。と思った。だから次弾は必ず当たる。そう信じてやまなかった。
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