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「こと、わ、る……!」
『そうか』
次の瞬間、左肩を抉られた。瞬く間に広がる鮮血。肩口を濡らす真紅の液。どこまでも鮮やかな赤だ。
「ぐぅ……!」
耐える。奥歯を思い切り噛み締めて虚勢を張る。
『なぜあんな化物に執着できるのか……』
――違う。あいつは化物なんかじゃない。人間だ。
「貴様こそ、なぜあいつを狙う……!?」
『世界のためさ。あれほど衰えの知らぬ生命力は人の生存率を高めるかもしれぬ。その秘密がわかれば大事な人間と共に過ごせる時間がもっと手に入る……』
「大義名分は大したものだがな……」
相手の言葉には、どこにもそんな本心はない。善意など欠片も含まれてはいない。自分達のエゴでリアを利用しようとしている。
肩に入れられているナイフは力が強くなっている。まだだ、まだ耐えるのだ。いい感じに入ったところで相手の腕を掴む。
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