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※
目が覚めると、白亜が視界に映った。首を軽く横に振ると、一人の女を確認した。白衣を纏った妙齢の女。その女は夜景を眺めながら月明かりに照らされていた。今はもう夜だった。
「那由多……」
体を起こす。
「ぐ……!」
激痛が走る。左肩と腹部にべらぼうに半端ない苦痛が満ちる。
「無理するな。傷はそこまで深くはないが、かと言って無事な訳もあるまい。まあお前のことだ。どうせすぐには死なんのだろう?」
皮肉にも当てこすりにも聞こえるのだが、何よりも恩着せがましい。
「……ジャケットは?」
「ほら」
血に染まったジャケットが投げ渡される。
「もうそれは着ないほうがいい。不衛生だし、何より汚い」
「悪かったな……」
ジャケットからタバコを取り出す。ビニールが掛かっていたおかげで、血糊は付着しているが中身には影響がない。
「おいおい、ここは病院だ。いくらお前だけの部屋だといっても、それは控えてもらおうか」
「堅いことを言うな」
「タバコはやめたんじゃなかったのか?」
那由多は含みを持ちながら要に面白おかしく問う。その気色が見えて要は黙殺した。
ライターを出し、火をつける――
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