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……それはまるでガラス細工で出来ているような、美しい少女だった。
肌は血管が透けそうな程蒼白く透明で、ほっそりとした肢体に、中性的な顔立ち。
表情は感情が欠落しているかの如く、無表情。
だがそれが更に作り物のように美しく、魅せる。
「……君は、なに?」
そう問う理由は勿論彼女の背中にある。
武骨な貴金属と仄蒼く光る、ガラスのような飾り羽。
ただの飾りかと思いきや、それはしっかりと背中から生えており、尚且つ彼女の微かな息遣いと共に動いている。
彼女は疲れたかのように身体を横たえ、死んでいるかのように目を閉じていたが、僕の声に時間差で反応したらしく瞼をぴくりと動かした。
重たそうに長い、色素の抜けた睫毛を上げると、ビー玉のような蒼い瞳を此方へ向けた。
桜色の小さな唇を少しだけ動かし、澄んだ美しい心で言葉を紡いだ。
「…………て、ん、し」
その答えに別段驚いたりはしない。
寧ろ「あぁ…」と納得してしまった。
「……天使がどうしてこんなところにいるの?」
彼女は指先をぴくりと動かした。
そして、ジャラリ…と音を立てながらゆっくりとした動作で手を自分に近付ける。
ジッ…と伸ばした指先を見て、瞬きを一つ。
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