#Prologue

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頬を通り抜ける風はやや爽やかに。 廊下の窓を透かす夕暮れはやや眩しく。 耳に入るのは、 反対側にあるグラウンドからの野球部の雄叫びと、 合奏真っ最中の吹奏楽部の音色と、 自分の上靴が紡ぐペタペタと可愛らしい音と。 今日の放課後がいつも通りだと思うのはおそらく私以外。 いつも通り、なんかじゃない。 だって今日は金曜日だもの。 あんなに近くにあったはずの雄叫びと音色はいつの間にやら遠ざかっていて。 気付けば上靴の音だけが廊下を支配していた。 たとえば私が美術部だったら。 こんな事してなかったでしょう? 一つ深呼吸。 手をドアに掛けて。 いつも通り。 扉を開けた。
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