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「ちっちゃーん!!」
「ぐふぅッ!!」
夏休み明け初日。
廊下を歩いていた俺は、背後からタックルされた。
「………なんだ、朝陽か。」
「ぅわあ!『なんだ』って何?!」
「ぃんや~べっつにぃ~?」
「う゛ぅ…ちっちゃんがヒドイぃ…」
朝陽が、泣き真似をして目元をごしごし擦った。
「はいはい。久しぶり」
俺より少し低い ふわふわの頭を撫でて、
朝陽を宥めた。
…同時に、ホッと胸を撫で下ろす。
朝陽を見た瞬間、
あの日のことを思い出した。
反応するのが僅かに遅れたが、バレてないみたいだ。
「そういや、ちっちゃん。夏休み何してたんー?」
「……ッ!」
まさかバレた?とか思ったが、そうじゃないと思い直した。
いつも夏休みになると、ほぼ毎日ずーっと遊んでいたのに、
今年は全く顔を合わせてすらいなかったからだ。
「あー…バイトしてた。」
「それなら教えてくれても良かったのにぃ!」
ぷくっ、とふにふにしてそうな頬を膨らませた。
突き出された、淡いピンクの唇を見る。
(……多分、キス…したんだろうな…)
口を引き締めて顔に力をいれた。
そうでないと、涸らしたはずの涙が出てきそうだった。
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