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「…朝陽!」
「――っ。」
後ろの方から声がする。
振り向かなくても、誰の声か分かる。
会いたくなかった、でも会いたかった。
振り返って走って来る瞬を見た、……朝陽を見るアイツを。
バッグを2つも肩にかけて、
呆れた顔の瞬が朝陽に話しかけた。
「お前なぁ、バッグ放り出して駆け出すなよ」
「いーじゃんっ!けちぃ!
ちっちゃんの後ろ姿が見えたんだから仕方ないでしょ?!」
「訳分かんねぇよ」
前髪をグシャッとして、はにかんだ。
(…あぁー…幸せそうだ…)
思わずそんな言葉が浮かんだ。
滅多に見ない、瞬の笑顔。
心から楽しいと思ったときにしか見せないから、
もはや希少すぎるぐらいだった…けど。
(朝陽と一緒なら、幸せなんだろうな…)
僻みでもなんでもなく、
素直に幸せそうな2人を見て思ったんだ。
……心から。
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