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――
「くっそぉ……2人でこの量はねぇよな~」
隣で箒の柄に顎を乗せて、
椎葉がぼやく。
それを横目で睨みつつ、
その呟きを無視して俺は箒で教室を掃いた。
本当に椎葉は実行しやがったのだ。
何をか?…言うまでもねぇ。
アイツは『期待してろよ?』の言葉通り、
全部の授業で担当教員の似顔絵を描きやがった。
もはや呆れるのを通り越して、
椎葉の馬鹿さ具合にある意味感動する。
しかし椎葉の言う通り、
この教室は意外と広いから掃除するのは一苦労だ。
はぁ、と溜息を吐いてから椎葉を見た。
「椎葉…口じゃなくて手ぇ動かして。俺は早く帰りたい」
「はいよ~ぅ」
やる気の無い返事をして、
やる気の無い顔の椎葉が再び掃除を始めた。
(不本意だけど!!)
俺たちに下った罰は、「教室掃除1週間の刑」だった。
つか、今日の放課後だけから期間延びてるし。
(はぁ……最近、色々ツイてない。)
「ちぃ」
背後から低い声が俺を呼ぶ。
――…ほらね。
くる、と声の主に向き合う。
どうか自然な顔に見えますように、
そう祈りながら。
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