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――
「も、大丈夫……ごめん。」
椎葉の胸に手をついて離れるように押す。
僅かな抵抗を感じたが、すぐに椎葉が身体を離した。
「ごめん。シャツ…濡らした」
「ん?あ~…平気へーき。乾けば済むから」
「……ごめん」
もう一度謝ると、
はぁ、と溜息を吐いて椎葉が俺を覗き込んだ。
「ちっちゃん、大丈夫じゃないじゃん。
謝って欲しくて胸貸した訳じゃないんだけど~?」
「………ごめん」
「あぁー!!もう、だからさぁ!!」
ぐしゃぐしゃ、と髪を掻き、
パン!と俺の顔の前で手を叩いた。
「お、れ、は!謝って欲しいんじゃないの!!」
「ぇ……?だって、シャツ、濡らしちゃったし。」
「それは気にしなくていーの!
むしろご褒美はちっちゃんの笑顔がいいんだけど!」
「……お前、どこのホストだよ」
椎葉の変な要求がおかしくて、自然と笑みが零れた。
それを見た椎葉がビシッと指した。
「そうそう!その顔!
ちっちゃん、笑ってた方が絶対ぇいい!可愛い!!」
「可愛っ…!?
俺は男だ!言われても嬉かない!!」
「あ~…俺、バイだから、気にしないんだよね」
「…は?はああ?!」
椎葉の突然のカミングアウトに開いた口が塞がらない。
「……お前…堂々としてんな…」
「ん?まぁね。
だーって、好きになったら仕方ないだろ~? 人間だもの~」
「名言をこんなときに使うな。みつをに謝れ」
ぺしんと椎葉を叩くと、
頭を擦って下唇を突き出しながらも楽しそうに笑った。
「さっさと掃除終わらせて帰ろ」
「はいはーい!!」
今度はやる気のある返事をして、椎葉が掃除を始めた。
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