転校生

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****** 「椎葉、ちりとり取って」 「あ、俺やるからいーよ。  ちっちゃん、代わりに雑巾干してくんね?」 「分かったー」 掃除は順調に進み、 話してみると案外椎葉は面白い奴だと分かった。 「俺このままゴミ捨ててくるから、帰る支度しといて」 「悪ぃ、椎葉。ありがと」 更に意外と気遣い屋だ。 顔も悪くないし、多分モテるんだろうなと思う。 教室の窓から、合唱部の歌声が聞こえる。 それに釣られるようにフラフラと窓際に立った。 静まり返った教室に、一人。 嫌でもあの日の事を思い出してしまう。 『…っ…朝陽…ッ!』 ――…嫌でも、瞬の声を思い出してしまう。 そのとき、 合唱部の歌声が止み、別の曲に変わった。 『君のことが好きだった  その視線が俺に向いてなくたって構わない、と思うぐらいに  自分を誤魔化すのは辛くて、  何度君を憎めたらいいと願ったのだろうか  俺が泣いていることを、君は知らない  俺が仮面をつけて笑うことを、君は知らない  気付いて欲しい、でも気付かないでくれ  この気持ちを捨てることだけが、今の俺に出来ること』 柔らかいハーモ―ニーと優しい伴奏が、俺の心の隙間に侵入する。
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