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「は…ぁ?!何言って…」
「だから『俺たち付き合わない?』って言ってる」
聞き間違いかと思ったのに、
今度はしっかり、はっきり断言されてしまった。
「冗談だろ?」
「いんや、至ってマジメ」
けらけらと軽薄そうに笑う。
コイツ…見た目もそうだけど、
ただ単にチャラチャラして誰とでも付き合うような奴じゃないのか?
さっきの優しい手つきが一気に頭の片隅に追いやられる。
裏切られたような気分になり、
キッと椎葉を睨んだ。
「イヤだ。第一、俺たち男同士だ!」
「だから俺、そーいうの気にしないって」
気にしろよ!!
椎葉の鳶色の瞳を見ていると、
言葉の裏に何かを隠しているような気がしてんのに…何なのか分からない。
瞬と朝陽の事を話してもらえなかったせいか、
隠し事をされてると苛々する。
「とにかく!俺はゲイじゃねーの!!」
苛立ちを籠めて言うと、椎葉が不思議そうな顔をした。
「でも、ちっちゃんの好きな人は男だろ?」
「――ッ!!……っんで…知って…」
今日逢ったばかりの奴に、
何で俺の気持ち知られてんの……
驚きと、恐怖心と、疑問と、
色々な感情が入り混じった瞳で椎葉を見つめる。
いや、多分“見つめる”なんて意志のある行動なんか出来なかった。
ただただ…椎葉を“眺める”ことで精一杯だった。
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