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「あぁー!ごめんて!そんなつもりじゃなかったのに!!」
椎葉が親指を俺の目元に当てる。
また涙が出ていたようだった。
最近、涙腺緩みまくってんな…
そう考えると、原因が思い当たってしまうから嫌だ。
ふるふる頭を振って考えるのを止めた。
「――…ちっちゃん、マジでにゃんこみてぇ…」
俺の頭を撫でて優しい瞳になった。
コイツ…チャラかったり、チャラくなかったり……なんか調子狂う。
「うざい。手ぇ退かせ……って、顔きもい」
ぺしんと手をはたくと、
椎葉が更に蕩けるような表情になった。
「やべぇ…ちっちゃん、ホント可愛いわ~!強がってるネコだ」
「ネコじゃねーし、強がってなんか…「それは嘘だ。」」
スパッと椎葉が言い切る。
確信を持った、真剣な顔が俺を見下ろす。
「好きなんだろ?朝陽の恋人」
“何でコイツは朝陽と瞬が恋人だって知ってるんだ”
そんな疑問なんかより先に、
“あぁ…やっぱり2人は付き合ってるのか”
という感想が浮かんだ。
そして、思い知る。
“瞬の1番は、俺じゃなかった”
ってことを。
ぎゅ、と俺を抱く力が強くなる。
「悪ぃ……でも頼むから、泣くのは堪えんな」
掠れた声が、鼓膜に響く。
その声に誘われて涙がぽたぽた椎葉のシャツに零れる。
「……泣いてていーから、聞いて」
こくん、と頷くと、椎葉が話し始める。
「さっきは、ごめん。
ちっちゃんの気持ち考えないで言った。
『男だから好き』って訳じゃないのに、
そういう風に聞こえたのはホント無神経だったと思う。」
また頷くと、椎葉が小さく「ごめん」と言った。
「何て言ったら言いか分からなくて、
色々と纏まらないと思うけど…説明させて」
説明…?
何の説明なんだろうか。
そう考えてる内に、
椎葉が椅子を持ってきて座るように言った。
大人しく座ると、
椅子を逆向きに跨った椎葉がこっちを見た。
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