変態の愉快な日常

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四階建ての三階が二年生のフロアだ。 一年生が一番上で三年生が一番下、僕はいつもこの構造に人生は下り坂であるという言葉を送らざるをえない。 まぁ人生なんてものは中学生が語るには些か物騒なのでやめよう。 長い階段を登ると正面に二の四、つまりは僕の教室が現れる。一旦ハンドタオルで額の汗を拭く。 そして鍵穴に鍵を差し込み右に半回転させたところで、僕は奇妙な感覚に遭遇した。 いつもなら鍵が開く、という確かな感覚が僕を愉快にさせるはずなのにそれがない。 つまり今現在僕がここに来る前に鍵は何者かによって開けられたのだ。 僕は自分の右手の鍵を見つめる。 もし僕が有名な探偵の孫ならばじっちゃんの名にかけてこの謎を解き明かしただろうし、もし僕が東の天才高校生探偵なら真実はいつも一つだろうが、生憎僕の祖父は田舎で農業に勤しんでいるし、僕は《普通》の中学生だ。 なので遠慮なく、それはもうためらいもなく扉を開けて犯人を確かめることになんの抵抗もなかった。
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