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「冗談よ」と、冗談には聞こえない調子で言い、咲夜が先へ進んでいく。……この子は間違っても怒らせないようにしよう。
ところで、フランって誰だろう。お嬢様、って言ってたけど、レミリアが紅魔館の主じゃなかったのか?
「着いたわ」
階段が終わり、その先の小さな木造ドアを開くと、今度は暗い地下に出た。ゴツゴツとした岩壁がむき出しのまま、四方に広がっている。
「……さ、さむっ! うわっ、水びたしじゃねえか! お、おいおい、本当にこんな所に、そのフランお嬢様がいるのか? ひでえ環境だな。東京の二万円アパートの方がまだまともだぞ」
「……そうね」
対する咲夜の返事には、心憂げながらも、共感の響きがあった。……なるほど。何か事情があるらしい。
部屋の最奥には、城門のように背の高い鉄扉があった。七色の宝石が埋め込まれ、ミミズが這ったような幾何学模様が描かれている。いかにも、アブナイものを封じてる雰囲気だ。
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