初恋と隣人

6/7
前へ
/27ページ
次へ
「なんでもないです。戴きますね」 私はそう言うと、軽くお辞儀をした。 それで終わる……はずだった。 なのに、 「あ、のさ。もしかして……嘉村(カムラ)さん?」 彼はそう言うと、勢いよく外に出て表札を確かめた。 そして、次の瞬間 「やっぱそう?嘉村羽子(ハコ)だよね?あ、ゴメン。呼び捨てにしちゃった」 と言って慌てている。 「あっ、俺のこと分かる?分かんないかぁ!?」 そう言って首を傾げた池上くんは、昔と変わらぬ人懐っこい笑顔で私を見つめていた。 「わかります、よ。池上くんは有名人ですから」 と答えた私は、多分ちょっと赤くなっていたと思う。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

125人が本棚に入れています
本棚に追加