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「なんでもないです。戴きますね」
私はそう言うと、軽くお辞儀をした。
それで終わる……はずだった。
なのに、
「あ、のさ。もしかして……嘉村(カムラ)さん?」
彼はそう言うと、勢いよく外に出て表札を確かめた。
そして、次の瞬間
「やっぱそう?嘉村羽子(ハコ)だよね?あ、ゴメン。呼び捨てにしちゃった」
と言って慌てている。
「あっ、俺のこと分かる?分かんないかぁ!?」
そう言って首を傾げた池上くんは、昔と変わらぬ人懐っこい笑顔で私を見つめていた。
「わかります、よ。池上くんは有名人ですから」
と答えた私は、多分ちょっと赤くなっていたと思う。
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