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全員を朝マックで釣ったせいで、明日の財布はカラ確定だ。
昼休みのチャイムが鳴って五分経った。すでに美奈子は体育館裏にいる。告白前とあって、そわそわと落ち着かない様子だ。渡はそんな姿になぜか気分が悪くなって、そこを離れてしまった。
それと入れ違いに、狭霧がやってきた。……彼とのすれ違い様、渡はどんな顔をしただろう。少女のような少年は、まるでナイフでも向けられたように息を呑んだ。渡は構わず、校舎の昇降口に向かって歩く。
体育館と昇降口の距離が離れているため、もしやりあうとしたら校庭でだ。
敵のいる校舎を見上げた、そのときだった。ベランダがない二階の、理科室の窓が豪快に開く。一刹那の間を置いて、そこから竹刀とトートバックを持った人影が弾丸の如く飛び出した。あんぐりと口を開ける渡の前で、彼女はポニーテールの黒髪を盛大に揺らして着地する。
顔を上げた梨花と渡の、目が合った。いま、戦いの火蓋は切って落とされる。
渡は反射的にベルトからそれを引き抜いた。乾いた音が、曇天の下で鳴り響く。
「いたっ……」
距離を縮めようと突っ込んできた梨花が跳びのいた。半袖のシャツと短いスカートからすらりと伸びる彼女の手足を、小さな弾丸が容赦なく叩いていく。両手にエアガンを一丁ずつ持って、渡は弾を乱射した。
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