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「そこを、どけ!」
迫りくる弾の雨をかいくぐった、梨花の怒号が空気を震わす。
「できません。会長」
告げる渡は悲しげな瞳で銃を構え、彼女に向けて引き金を引いた。
ああ、いまごろ美奈子は、狭霧に――
そう思うだけで、どうして悲しくなるのだろう。ここで梨花を食い止めることに、迷いが生じた。引き金を引く動きが鈍る。
次の瞬間。
「がっ!」
いつの間にか急接近してきた梨花が、竹刀も折れよとばかりに渾身の一撃を叩き込んできた。落雷に遭ったかのような衝撃が、脳天から足元まで突き抜ける。
頭の中が真っ白になったクリアな世界で、
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