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梨花の古剣術で滅多刺しにされる自分の姿が、簡単に想像できる。何せ彼女はたった一人で剣道部全員を返り討ちにするくらいのバケモノなのだ。山田が勝てるわけがない。が、梨花は問答無用で話を進める。
「あたしは昼休みのチャイムが鳴ると同時に全力で美奈子を妨害にかかる。そしたら山田も全力であたしを止めにこい。……狭霧は、美奈子なんかに……」
やらないんだから、とつぶやいたその声は小さすぎて、渡の耳には届かなかった。梨花はそのまま、足音も荒く立ち去っていく。結局山田には、意見するひまがなかった。
昼休み。
梨花はいつでも有言実行。やるといったらやる女だ。その性格を知っているから、渡は駆けずり回ってありったけの迎撃準備をした。
一限の授業をすっぽかして家に帰り、たった一つ自信のある分野の武器を手にして学校へ戻った。そして死ぬ思いで梨花を食い止める人員を募り校舎内に二十人配置。
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